調停を行う前に一度は読んでおきましょう。

1 調停とは
 「調停」とは、広い意味では、紛争の当事者以外の第三者が当事者の間に入って双方の言い分を聞きこれを折り合うように調整して紛争解決の合意(和解)ができるようにあっせんし協力することを言います。しかし、現在では国家機関が制度的に行なう場合を指す言葉となっています。調停を行なう国家機関としては裁判所の他に労働委員会や公害等調整委員会などがあります。裁判所が行なう調停には、「民事調停」と「家事調停」があります。
 前者の「民事調停」は、離婚や相続などの家事事件を除いた民事の紛争一般について家庭裁判所以外の裁判所が行なうもので、後者の「家事調停」は家庭に関する事件について家庭裁判所が行なうものです。いずれも、原則として裁判官1名と民間人から選任された「調停委員」2名によって構成される「調停委員会」が調停を運営しています。
 調停対策会議では、この民事調停のうちの簡易裁判所で行なわれる「特定調停」を活用して多重債務者の救済を図る活動、「特定調停」の運用が適正になされるための運動を行なっています。
2 特定調停法の成立および施行
 「特定調停」は、「特定債務等の調整のための特定調停に関する法律」(以下、「特定調停法」といいます。平成11年12月13日成立、同月17日に公布)に基づき、平成12年2月17日から施行された手続きです。その目的は、支払不能に陥るおそれのある債務者等の経済的再生に資するため、民事調停法の特例としての手続きを定めることにより、このような債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を促進することにあります(同法第1条)。
3 特定調停の位置づけ
 特定調停法は、民事調停法をベースに一部特別の取扱いを定めたものです。したがって、基本的な手続の構造や進行の方法は、、通常の民事調停の構造や進行と変わりません。しかしながら、全国の簡易裁判所では、この特定調停ができる以前からクレ・サラ調停として債務弁済調停が独自に工夫されて実践的に運用されていました。このことから特定調停も各地の簡易裁判所での従前の債務弁済調停の延長上の存在として現実には運用されています。
 この特定調停は、簡易裁判所の調停申立件数のうち、最大の割合を占めるものでもあります。
4 特定調停の特色
 (1) 管轄の異なる債権者が多数いる場合でも一括処理を可能としました。
 特定調停手続は、多重債務者の債権債務の総合的な解決を目指すものですので、集団的な処理を必要とします。そこで、特定調停法は事件の一括処理のため、移送の要件を緩和し(同法4条)、地裁への裁量移送の制度(同法5条)を新設した他に、同一申立人による複数の事件が同一の裁判所に係属した場合にはできる限り併合して扱わなければならない旨を定め(同法6条)、また、利害関係人が手続参加する際に調停委員会の許可なく参加できるようにしています(同法9条)。このうち同法6条は、債権者のうち1社でも申立人の住所地にあれば、他の債権者がどれほど多数管轄外にあろうとも住所地を管轄する簡易裁判所で一括審理を可能としている点で、この制度を利用しやすくしています。
 (2) 裁判所の判決(や和解調書、調停調書)による民事執行手続きの停止も可能となっています。場合によっては無担保で民事執行手続きの停止も可能です。
 裁判所は、特定調停の円滑な進行を妨げるおそれがある等の場合に、担保を立てさせないで(特定調停以外で強制執行が不当・違法であるという理由で強制執行を止める場合、通常は債権額の何割かの金額を担保として法務局に供託することを裁判所から求められます)、判決書、和解調書等に基づく民事執行手続きの停止を命ずることができます(同法7条1項)。この無担保による執行停止自体も意義のあることですが、さらにこの規定の存在により、ここから派生して商工ローン対策について無担保での「調停前の措置」による手形の取立て・譲渡の禁止が可能となったことに大きな意味がありました。
 (3) 債権者が取引経過の資料を提出しないときは、調停委員会が提出命令を出すことができます。また、正当な理由のない不提出に対しては、10万円以下の過料の制裁を加えることが可能となっています。
 特定調停法10条は、「当事者は、調停委員会に対し、債権又は債務の発生原因及び内容、弁済等による債権又は債務の内容の変更及び担保関係の変更等に関する事実を明らかにしなければならない。」と定め、当事者間の責務として取引経過の開示を義務づけています。これを受けて、調停委員会は、特定調停のために特に必要があると認めるときは当事者または参加人に対し、事件に関係のある文書または物件の提出を求めることができ(同法12条)、これに正当な理由なく従わない場合、同法24条により、10万円以下の過料の制裁が加えられるようになっています。同法12条は、民事訴訟法上の文書提出命令とは性質の違うものと解されており、不提出の場合に存在を推定されるべき立証事実というものを想定していません。この文書提出命令の新設が、特定調停法の目玉でした。
5 特定調停の基本方針
 従来からの簡裁クレ・サラ調停の基本方針が特定調停では一般化されています。
 もともと特定調停の成立以前から、一部の簡易裁判所では、
 (1) 取引当初にさかのぼって利息制限法による引き直し計算を行うこと
 (2) 将来利息のカット
 (3) 3年から5年以内を一つの指標とする長期の分割払い
 の3つの基本方針がとられていました。特定調停法成立後、全国的にこの基準が一般化してきています。

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